同窓会(アラムナイ)コミュニティは、学校と卒業生を繋ぐ大切な存在であり、その活動が活発化することで、寄付額の増加やブランディング力の向上といった多くのメリットが学校にもたらされます。また、それらのメリットは、学校の教育環境や施設の充実化、ひいては学校全体の評価に繋がるため、改めて学校運営における同窓会コミュニティの重要性が注目されています。本記事では、同窓会コミュニティが学校にもたらすメリットをデータを基に分析し、その長期的な影響についても考察します。1.同窓会(アラムナイ)コミュニティ同窓会コミュニティは、学校と卒業生を繋ぐ重要な架け橋であり、その活動は学校の発展に対して多くの利益をもたらします。同窓会コミュニティの役割は単に過去を振り返る場を提供するだけでなく、卒業生との強固な絆を維持し、彼らが母校への愛着を持ち続けるよう働きかけることにあります。このコミュニティの活性化は、学校運営にとってどのような意味を持つのでしょうか?1-1.同窓会(アラムナイ)コミュニティとは何か、その役割と意義同窓会コミュニティとは、卒業生たちが母校との絆を保ち続けるために組織される集まりを指します。これは単なる社交の場にとどまらず、母校への愛情や感謝の気持ちを持ち続ける卒業生たちが集い、共通の経験を通じて築かれた関係性を維持・強化するための重要な場です。同窓会コミュニティの役割は多岐にわたります。第一に、卒業生同士のネットワークを築き、維持するための役割を担っていることです。このネットワークは、個々のキャリア形成やビジネスにおいても重要な役割を果たし、卒業生同士が助け合い、互いの成功を支援する場として機能します。第二に、同窓会コミュニティは卒業生が母校に貢献するための架け橋となります。例えば、卒業生が寄付を通じて学校の施設改善や奨学金制度に貢献したり、講演会やセミナーで在校生に貴重な経験を共有したりすることが挙げられます。これにより、同窓会コミュニティは単なる社交の場にとどまらず、学校の発展に寄与する重要な組織として機能します。さらに、同窓会コミュニティは学校にとって貴重な歴史の保持者でもあります。同窓会コミュニティを通じて、学校の伝統や価値観が次世代に継承され、母校のアイデンティティが強化されます。卒業生が定期的に集まり、母校とのつながりを再確認することで、学校の歴史や文化が生き続けるのです。1₋2.学校運営における同窓会(アラムナイ)コミュニティの重要性現在、日本の大学経営は米国に比べ、危機的状況に陥っています。このままだと日本の基礎研究は後退し続け、教育の質も落ち続けることが考えられます。それを解決するために必要なことは、卒業生という眠れる資産の活用です。これまで眠っていた卒業生ネットワークを可視化し、卒業生のエンゲージメントを上げることで学校組織に「人・金・知恵」が集まり続ける仕組みをつくるのです。そこで重要となってくるのは、同窓会コミュニティを活性化することです。同窓会コミュニティの活性化は卒業生エンゲージメントの向上に繋がり、そして、そのエンゲージメント向上が学校運営に様々な成果をもたらします。その成果とはどのようなものか、見ていきましょう。2. 卒業生エンゲージメント向上が学校にもたらす成果2-1.卒業生エンゲージメント向上による影響同窓会コミュニティ活性化による卒業生エンゲージメント向上がもたらす成果には様々なものが考えられます。・寄付の増加・ホームカミングデーの参加者増加・卒業生の名簿データ収集・リカレント教育受講者の増加・ブランディングへの寄与・学生へのキャリア支援・学生募集の強化次章から、卒業生エンゲージメントが「寄付の増加」「ホームカミングデーの参加者増加」「卒業生の名簿データ収集」に繋がることを、データや事例を交えながら紹介していきます。2-2.寄付の増加寄付額をいかに増加させるかは学校運営において重要なテーマであり、日々卒業生・募金担当の学校職員様が取り組んでいる課題の一つでしょう。引用:高等教育と科学研究を支える寄付この論文では、大学への帰属意識と寄付に対する行動の関係性を調査しています。この論文によれば、出身大学の一員であるか否かによって、「今後寄付をする可能性なし」という回答割合に約40ポイントもの差が生まれたそうです。この論文からもわかるように、学校への帰属意識の高さ、つまりは卒業生エンゲージメントの高さが、寄付をする可能性に繋がるのです。また、卒業生エンゲージメントの向上により、寄付額が増加することは、PeopleGroveが以下のサイトで調査結果を紹介しています。引用:「The 2021-2022 PeopleGrove Social Capital Impact Report」PeopleGroveは、教育機関とその卒業生を結びつけるためのプラットフォームを提供する企業であり、卒業生のネットワーキング、メンタリング、キャリアサポートを促進し、卒業生と在学生、教職員がコミュニティを通じて相互にサポートし合える環境を作ります。下記の動画では、PeopleGroveのプラットフォームを利用しているヴィラノヴァ大学の同窓会担当副学長の方へのインタビューを通して、卒業生のエンゲージメント向上が寄付に繋がっていることを紹介しています。引用:Leverage Alumni Engagement to Drive Giving Outcomes | PeopleGroveこの動画によると、卒業生の52%がPeopleGroveのコミュティに参加したことで、寄付やボランティアで母校に恩返しする可能性が高まったと回答したようです。大学への寄付額の多いアメリカにおいて、このような調査結果が出ていることは興味深いものであり、日本の大学でも卒業生エンゲージメントが向上すれば、寄付の増加が見込まれるでしょう。2-3.ホームカミングデーの参加者増加ホームカミングデーはアメリカでは非常に盛んな文化であり、日本でも開催する大学が徐々に増えてきています。ホームカミングデーの認知度を上げて、参加者数を増加させるために多くの大学が様々な取り組みをしています。その大学の一つに、弊社がイベント運営を手がけた、東京大学があります。東京大学ホームカミングデイは参加者数が多く、成功している事例の一つです。その成功の秘訣として、周年ごとの懇親会の開催があげられます。周年懇親会というのは、卒業10周年、20周年と節目となる卒業生向けの同期会のことです。「周年という特別感」「同期に会える」この2つの要因により懇親会への参加者数が増え、それに伴い、ホームカミングデーの参加者数も増加しています。引用:5年次で500名が参加した周年懇親会!東京大学が取り組んだ幹事の集め方とサポート内容とはこれは同窓会コミュニティの中でも「同期」というコミュニティに絞って、そのコミュニティを活性化させたことにより卒業生エンゲージメントが向上し、結果的にホームカミングデーの参加者数が増加したといえるでしょう。また、東京大学のように、コミュニティを活性化してホームカミングデーの参加者を増加させることは、中長期的な戦略として優れています。ホームカミングデーの参加者を増加させる施策として、タレントを呼ぶというものがあります。この方法は、認知施策としては有効ですが、一過性に過ぎず、また、キャスティングに費用がかかりすぎてしまいます。それに比べ、コミュニティを活性化させた施策はコストパフォーマンスが高いです。ホームカミングデーの日に母校で同窓会をするという文化が醸成されれば、その同窓会の参加者が毎年ホームカミングデーに参加してくれます。また、大学が卒業生を集客するだけでなく、各コミュニティの幹事が周りの卒業生を集客してくれる体制が構築できます。このように、コミュニティを活性化してホームカミングデーの参加者を増加させるという方法はコストパフォーマンスが高く、中長期的な戦略として優れています。2-4.卒業生名簿データの収集学校は寄付の促進やキャリア支援など、さまざまな目的で卒業生の名簿を管理しようとしていますが、全ての大学が漏れなく卒業生のデータを集められているわけではありません。卒業生の名簿をしっかりと集めるためには、卒業生エンゲージメントを向上させる必要があるのです。卒業生エンゲージメントが向上するということは、卒業生が母校との関係を大切にしているということです。その場合、自分の情報を更新・提供することに対して前向きになります。例えば、定期的なイベントへの参加や、母校からのニュースレターの購読を通じて、卒業生は自分の情報が最新であることを確保しようとします。これにより、名簿データの収集率が自然と高くなります。また、卒業生と学校の双方向のコミュニケーションが名簿更新を促します。卒業生エンゲージメントが高まると、卒業生との双方向のコミュニケーションが活発になります。この中で、卒業生と普段からコミュニケーションが活発になることで、名簿の更新や追加情報の提供を自然に求めることができ、卒業生もそれに応じやすくなります。引用:同窓会のプロが教える名簿管理の決定版!代表的なシステムや2024年トレンドも紹介この記事でも紹介しているように、卒業生が名簿データを更新したくなるようなイベントやコンテンツ施策、インセンティブなどを提供し、卒業生エンゲージメントを向上させることが卒業生の名簿データの収集に繋がるのです。3.卒業生エンゲージメントを上げるためにコミュニティ活性化が有効な理由先ほどの章で、卒業生エンゲージメントの向上が学校運営にもたらす影響について紹介しました。この章では、どうすれば卒業生エンゲージメントの向上に繋がるのかを紹介します。3-1.なぜ卒業生のエンゲージメントが上がらないのか?そもそも、どうして卒業生エンゲージメントが上がらないのでしょうか?それには、以下の3つの理由が考えられます。・学校と卒業生の接点がない・学校が卒業生の状況を把握できていない・卒業生と在校生の交流がないいずれも学校と卒業生の関係の希薄さから来るものでしょう。どうすればこれらの課題を解決できるのでしょうか?3-2.コミュニティマーケティングこの3つの課題はコミュニティ活性化で解決できます。コミュニティマーケティングという言葉をご存じでしょうか?同窓会に限らず、最近ではコミュニティというもの自体がビジネスとして注目されています。コミュニティマーケティングとは、マーケティング手法の一種であり、その特徴はブランドの独自性を発揮しやすい点にあります。コミュニティマーケティングは顧客と接点を持つことが前提にあり、顧客と関係性を構築することで、よりブランドに強い愛着や共感を持つファンへと変わります。ブランドが自ら情報を発信しなくとも、ファンがSNSなどを通じてブランドについて発信してくれることがあります。このような顧客やファンとの深い関係性のことを「エンゲージメント」と呼び、コミュニティが活性化しているとエンゲージメントが高まります。このコミュニティマーケティングの考え方は同窓会にぴったりのものです。上図のように、同窓会の形は時間を経るごとに変わっています。従来の、大学や同窓会から卒業生に一方的にコミュニケーションを発信するだけでなく、一人ひとりの卒業生にとって帰属意識の高いコミュニティに所属させて交流させる方が卒業生エンゲージメントが向上します。また、同窓会コミュニティにおいて重要なことは、母校に愛着のある卒業生の存在です。その卒業生が広告塔となり同窓会のコンテンツなどをSNSで発信することで、新たな卒業生がコミュニティに加わります。4.コミュニティが活性化している状態とは同窓会コミュニティの活性化が卒業生エンゲージメントの向上に繋がり、それが学校に大きな影響をもたらすことを紹介してきました。では、具体的に同窓会コミュニティが活性化しているとはどのような状態を指すのでしょうか。皆さまも、自身の所属する同窓会コミュニティと比べながら読んでいただけると幸いです。4-1.理想的なコミュニティ活性化している理想的なコミュニティには、以下の2つの特徴があげられます。・密度の高いコミュニティがいくつも存在している・コミュニティ間を橋渡しする関係性があるこれらを満たしている同窓会コミュニティは活性化していると言えるでしょう。4-2.数値でコミュニティを分析先ほどは定性的に、コミュニティの活性化を定義しました。続いては、定量的に、コミュニティの活性化を定義していこうと思います。コミュニティの活性化を定義する指標は「コミュニティ規模」「投稿コンテンツ数」「コミュニティ内の投稿反応率」など、たくさんあります。様々な数値の指標があることを紹介しましたが、そのコミュニティの属性によって重要な指標は左右されます。そのため、コミュニティの特徴を理解することが大切です。そこで弊社が定めているコミュニティ活性化定義をご紹介します。この定義は弊社が行っているホームカミングデーなどのイベント運営の経験を通して定めたものです。皆さまの所属するコミュニティの属性を理解したうえで、参考にしていただければと思います。コアコミュニティの状況コミュニティの規模コミュニティマネージャー数投稿コンテンツ(お知らせ・トピック・イベント)コミュニティ内の投稿閲覧数 or MAUコミュニティ内の投稿反応率合格ライン50名以上1名以上月1件以上30%5%目標ライン100名以上3名以上月2件以上50%10%さらに、卒業生のエンゲージメントを測る指標として、「NPS」をご紹介します。NPSとは「Net Promoter Score」の略で、顧客ロイヤルティを測る指標のことです。この値は顧客満足度と異なっており、企業の収益と相関が強い点から経営指標として注目されています。引用:全国大学NPS®調査結果発表! | 株式会社エモーションテックこの記事からもわかるように、NPSが高い大学は「OB・OGネットワーク」「就職のしやすさ」など、学校の成果に繋がっています。皆さまの同窓会コミュニティでもNPSを意識してみてはいかがでしょうか。5.おわりに同窓会コミュニティの活性化は、学校と卒業生、双方にとって極めて重要です。卒業生が母校への愛着を持ち続け、積極的に関与することで、寄付の増加やイベント参加者の増加、学校のブランディング強化が期待できます。また、同窓会コミュニティを通じて卒業生名簿を充実させることは、学校の長期的な発展に不可欠です。ネットワークの強化やコミュニティの持続的な発展が、学校の評判を高め、次世代の学生にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。活性化した同窓会コミュニティは、学校と卒業生の間に深い絆を築き上げ、双方にとっての利益をもたらす持続的な発展の基盤となります。これからも、卒業生との関係を大切にし、コミュニティを育てていくことが、学校運営の成功に繋がる鍵となるでしょう。では、実際にどのように同窓会コミュニティを活性化すればよいのか気になった方も多いと思います。その一つの手段として、弊社のCHIMERというサービスがあります。このサービスは、同窓会コミュニティを活性化させるために、コミュニティをベースにした体験設計と独自性のあるプラットフォーム構築、プロフェッショナルによる活性化支援が特徴です。まずはお気軽に興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。CHIMER (チャイマー)