プロフィール谷村一成さん白門一新会一代目代表。香川県出身。中央大学法学部 2018 年3月卒。行政書士、ワークショップデザイナー、NPO 法人グリーンバード、NPO法人みんなの進路委員会他。岡野めぐみさん白門一新会二代目代表。神奈川県出身。カリタス女子高校卒。中央大学法学部政治学科2019年卒。東京大学法学政治学研究科法曹養成専攻2023年修了。「白門一新会」の特徴と設立経緯──まずは「白門一新会」がどのような組織なのか教えてください。中央大学公認の同窓会で、35歳以下の卒業生で構成される会となっています。在学生も4年生以上なら「準会員」として参加でき、3年生以下については「パートナー」として参加できます。役員の定年はさらに若く30歳で設定しており、より若い世代が中心になっていくという狙いがあります。実際に現役員のなかには在学生もいます。──新たに若手卒業生組織を立ち上げた経緯について教えてください。そもそも中央大学の同窓会(学員会)は、卒業年度ごとに結成される「年次支部」、居住地域ごとに結成される「地域支部」、共通した職業や活動目的を持つ人たちで結成される「職域等支部」の3種類があるのですが、年次支部は2017年度卒の代から設置されていなかったんです。そこに大学側も危機感を持ち、後の白門一新会の発起人となるメンバー数名に声がかかったのですが、そのときに年次支部の存在自体に疑問が投げかけられたんです。実は2000年以降に結成されたほとんどの年次支部は、立ち上げパーティーだけは盛大に開催するものの、その後は全く活動しないという状況だったからです。そこから横断型の若手卒業生組織を結成する案が出され、「白門一新会」が誕生しました。──「白門一新会」では活動理念として「ダイバーシティ」「生涯学習」「行動する同窓会」という指針を掲げていますが、これらを定めた経緯について教えてください。若手卒業生組織の立ち上げに際して「今の時代に同窓会は必要なのか」という議論が起こったのが始まりです。社会人としてのスタートを切って忙しい時期に、同窓会で活動する意義はなんだろうと話し合うなかで、この3つのコンセプトが生まれました。僕らは「同窓会は必要なのか」という問いに対しては、必ずしもそうではないと考えています。ただ、会社と家を往復するだけの生活のなかで様々な人と出会う機会を作れば、自己成長に繋がり、人生も豊かになると思うんです。所属するコミュニティは地域の集まりでも、趣味や習い事でもいい。その選択肢の一つとして同窓会はどうですか……というスタンスですね。──現在「白門一新会」の代表は二代目の岡野さんに引き継がれたそうですが、代表を引き受けようと思った理由を教えてください。学生時代から谷村さんの様々な活動を見てきましたし、幹事長を含めて学部生のときからお世話になっていたので、「先輩方のお手伝いをすることで何か学べないかな」くらいの気持ちで活動していたら、いつの間にか代表になってました(笑)。ただ、先ほどの活動理念の話もそうですが、多様な価値観に触れることで、自分の人生が豊かになるという経験は誰しもあると思うんです。大学に進学したときや、社会人になったときなど、環境が変化することで気付きを得たことは一つはあるはず。その選択肢の一つのとして、若手の同窓会があるというのはすごくいいなと思っています。「LINEオープンチャットの活用」「大学の各部署との連携」といった各所のニーズを汲んだ取り組み──現役世代に同窓会への関心を持ってもらうために、どのような取り組みを実施されていますか。同窓会に参加することで「どんな人たちと出会えるのか」を可視化することに努めています。公式サイト制作やSNS投稿だけでなく、メンバーのインタビュー記事などをnoteに掲載して「こんな人がいますよ」と発信しています。あとは、年会費がいらないことも訴求ポイントのひとつですね。あと一般的に同窓会は紙媒体でのコミュニケーションが煩わしいと思うので、全てオンライン化して参加へのハードルを下げています。コミュニケーションについては、役員から「イベントのお知らせ」などを流すLINEグループがあって。会員同士で交流したい人たちや、プロジェクトごとに企画を運営している人たちはLINEのオープンチャットで話し合っています。──同窓会の会員を増やすために、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。https://note.com/hakumonisshin/n/n136c458b57c2会員が増えるきっかけとなるのは、定期的に開催される懇親会や新歓ですね。今年から卒業直前の4年生向けに、1月末のテストが終わったタイミングで懇親会を開いてみたのですが、4年生よりも就活を意識する1、2年生ほうが多く所属してくれるという結果になりました。※次回は2024年5月19日に、ワインを飲みながら参加できる懇親会を開催。会員でない方も歓迎なので、中央大学を卒業した35歳以下の方は白門一新会のSNS(X、Instagram、Facebook等)をチェック。ーー就活を意識する在学生が参加するということは、キャリア系のイベントも開催されているのでしょうか。キャリア系のイベントは、オンラインや対面での開催、主催や大学当局との共催など、様々な形式で実施しています。あとはメンター制度を設けてほしいという要望もあって、いま準備を整えているところです。ほかの同窓会でキャリア相談をするとかなり年上の人が出てくるから、年齢の近い人に相談したいときに頼られることが多いですね。キャリアセンターや国際センターなど、学内のいろいろな部署から相談を持ちかけられます。ーー大学内の部署とも連携されているわけですね。大学の各部署と連携する機会は多いです。学生団体と共催イベントを開くこともあり、学生側がイベントを企画して「ゲストを呼びたい」となったときに、同窓会が金銭の工面を請け負うという形もあります。もちろん「白門一新会」から企画するケースもありますし、他の同窓会にゲストを派遣・斡旋する場合もありますね。──キャリア支援にあたり、支援側の卒業生を集めることができた要因はなんだったのでしょうか。在学生に自分のキャリアや経験を語りたい卒業生は意外と多いんです。卒業生として自分の話を披露できる機会は貴重なので、スケジュールさえ合えば行きたいという人は少なくないですよ。前提としてボランティア精神を持っていて、自分の人生を振り返る良い機会になるというのもあると思います。──率直に「白門一新会」において、現在の課題はなんでしょうか。私たちの世代では、在学中に「白門一新会」が結成されたので認知度もある程度高かったのですが、今の在学生のあいだではさほど認知されていないというのが、代表を引き継いだときの課題でした。ですから、もっと大学のなかで「白門一新会」の名前が広がるようなイベントを打ちたいですね。ただ、認知度ばかり考えているとキャリア支援ばかりになってしまうので、卒業生自身が楽しめるイベントも運営していきたいと思っています。──具体的には、どのような活動を行う予定ですか。「個人的なことを一緒にやれる人を見つけよう」というスタンスを考えています。これまでは比較的真面目な催しも多かったので。https://note.com/hakumonisshin/n/n857b7a371146「大人の社会科見学」として、福島原発やハンセン病の療養所など、個人ではなかなか立ち入れない場所へ行くイベントが好評だったんです。中央大学の肩書きを活用した「普段は行けないところ」への社会科見学も一定のニーズがあるので、それは続けていきたいと思っています。一方で「ボードゲームで遊びたい」といった要望も挙がっているので、気楽な活動も増やしていきたいです。役員側ばかりが仕掛けるのではなくて、参加者のみんなから「これをやりたいから一緒にやる人いませんか」と意見が出てくるのが理想ですね。中央大学へのアイデンティティを持つ卒業生が増えれば、社会で活躍する中大生も増える──「白門一新会」の運営を通じて、メリットを感じたことはありますか。大学の公認組織という肩書きに恩恵を感じることは、多々ありますね。例えば、イベントのゲストにアプローチするときも「中央大学公認組織の会長です」と言えば、ほとんどの場合でお返事をいただけます。中央大学の看板を使っていろいろな方との出会いが得られましたし、実際に今も一緒にお仕事をしている方もいます。──「白門一新会」を立ち上げたことで、大学側にどのような影響やメリットを与えられていると考えられていますか。大学側から見れば、若手卒業生が在学生に還元する流れが生まれたことは、大きなメリットだと思います。学生の活動に対して大学で予算を割けないときに同窓会がお金を工面するなど、僕らのフットワークの軽さで恩返しできているかなと感じます。大学側から卒業生に求められているのは、大きく「在学生向けの支援」と「寄付」に分けられると思いますが、在学生向けの支援については前述のキャリア支援のように、すでに一定の成果は出ていると思います。寄付に関しては今は何もしていないですが、長い目で見れば、大きな役割を果たせるのではないかなとも考えています。──「白門一新会」の存在は長期的なスパンでも影響を与えると。2017年卒以降の年次支部が設立されなかったように、今の若手卒業生の多くは、中央大学に対してアイデンティティをほとんど持っていないんですよ。コロナ禍に在籍した子たちは、なおさらです。ですから「白門一新会」を通じて卒業後も大学との関わりを維持できれば、いつか余裕ができたときに寄付をしてもらえるかもしれません。総じて「先輩として後輩の面倒を見る」という流れを作れたのは、大学にとって大きなメリットになると思います。僕らの活動を通して中央大学へのアイデンティティを持つ卒業生が増えていき、在学生を支援する流れができれば、社会で活躍する中大生も増えると思います。そんな在学生の活躍を通じて「中央大学の卒業生」にも箔が付き、結果として僕ら卒業生に返ってくると思うんですよね。──最後に、今後の展望について教えてください。まず二代目としてやらなければいけないことは、在学生に「白門一新会」の存在を知ってもらうことだと思っています。そのなかから「白門一新会」の運営に携わりたいという子が出てくれば嬉しいですね。