ギネスを達成した同窓会イベント「北大東京ジンパ2024」北海道大学東京同窓会組織交流委員会 委員長山本淳博様──北海道大学東京同窓会は、5月19日に昭和記念公園バーベキューガーデンにて「同じ会場で同時に鉄板焼きをした人数」のギネス世界記録をジンギスカン料理で更新しました。ジンギスカンパーティー自体はいつ頃から開催されているのでしょうか。2013年6月からスタートしているので、もう10年以上続いているイベントですね。──北大ではジンギスカンパーティーを「ジンパ」という愛称で呼ぶそうですが、ジンパはもともと北海道大学(以下、北大)全体で親しまれているイベントなのでしょうか。サークルの新歓や研究室単位で開かれるなど、本当にあちこちで開催されているので北大の文化と言っていいと思います。僕の在学中に「芝生が荒れるからジンパを禁止します」と大学側が一方的に通達したことがあったんですが、そのときには学生のみならず教員・職員からもものすごい反対意見が挙がって。ちょうどSNS黎明期だったので、各種SNSを中心にその問題が拡散されるという騒動になりました。最終的には落とし所をつけて、今でもジンパは続いているんですけど、それくらい大切にされているイベントです。──確かに、他の大学にはキャンパス内で鉄板焼きをするなんて文化はないですものね。そうした下地があり、同窓会としてもジンパを実施されているわけですね。そうですね。もともとは小じんまりと普通の新歓パーティーを開いていたそうなんですが、それではつまらないということで「ジンパをやろう」と意見が挙がったのが始まりと聞いています。──そして、2019年に群馬県で記録された277人を遥かに上回る798人を集めるイベントに至ったわけですが、そもそもなぜギネス記録への挑戦が企画されたのでしょうか。主催者が以前から「1回ぐらい記録を作りたい」と話していて、「記録といえばギネス」と、わりと安直な決まり方でした。実は当初の目標であった「1,000人を集める」も決して無茶な目標ではなく、普通にジンパを開催するときでも、コロナ禍前までは1,000人近くを集客できていたんですよ。──ちなみにですが、ギネスを呼ぶときはお金がかかりますよね。差し支えなければ、どれくらいのコストが掛かったのかを教えていただけますか。ギネスの申請には、その他諸々の人件費や監視員の手配も含めて、合計で200万円以上は掛かっています。──それだけのコストが必要となるのに、よく決行に踏み切られましたね。何とか捻出できるということだったんですが、大赤字です(笑)。来年以降もギネスを狙うというのは、ちょっと難しいですね。──その分、当日は全国紙の取材も入り、PR効果は大きかったと思います。現時点で、どのような影響がありましたか。現時点ですと、集客をコロナ禍前の水準に戻せたのが一番大きい効果だと思います。というのも、昨年のジンパはコロナ明け間もないこともあって、人数をかなり絞って約300人で開催していたんです。今年もまだ感染リスクを懸念されて、足を運んでもらえないのではと不安を感じていたのですが、「ギネス記録」に興味を持っていただけたようで。来年以降のPR効果についても、今後検証していきたいですね。──一方で今回の取り組みでは、事前に「ギネス挑戦」という言葉を控えたとお聞きしました。これはどういった意図があったのでしょうか。「こういうルールのギネスに挑戦します」と事前に宣伝してしまうと、別の人に先を越されてしまい、企画倒れになる恐れがあったからです。直前までは少しぼかした表現で「世界記録に挑戦します」とだけお伝えしていました。──予約・入金については、Peatixを活用されたそうですね。これはどんなメリットがあるのでしょうか。当日支払いでは手間が大きくなるので、昔から活用しています。Peatixでとくに重宝しているのが、グループ申し込みの機能ですね。研究室や部活単位での申込みも多く、毎回20組以上のグループ申込みがあります。その意味で北大東京同窓会のジンパは、小規模な同窓会のプラットフォームのような役割を果たせているのかなと思います。ジンパに来れば自分たちで店を用意する必要もないですし、集まるきっかけにもなりますし。──参加費については、「早割」を取り入れられているそうですね。「後々に申し込むと高くなるので、なるべく早く申し込んでほしい」という意図を込めて、設定をしています。1,000円くらいの価格差だと「後でもいいか」となってしまい、結局申し込み自体を忘れるということがすごく多いので、価格差はかなり大きくつけていますね。ただ収支としては、早割の値段をベースとしています。逆に言えば、直前の予約に対して値上げをしていると言ったほうが正しいかもしれません。──今回の取り組みのなかで、課題となった部分を教えてください。そもそもの運営メンバーが少なく、当日は人手も足りなかったので、みんな疲弊しながらやっていたところがあります。地道な努力は多かったですね。例えば、ギネスチャレンジエリアとして区画を作らないといけなかったのですが、お金もそんなに掛けられないので、杭を打って囲いを作る作業も自分たちで行いました。例年のジンギスカンパーティーであれば、業者さんに発注することで負担も軽くできるのですが、やはり人手と予算は大きな課題となりました。全国的にも珍しい30代中心の運営組織──運営メンバーの人手不足のお話が出ましたが、山本さんのように30代前半で同窓会運営に携わる方は少数です。そもそも山本さんが「北大東京同窓会」に関わりだしたきっかけを教えてください。卒業後、北大東京同窓会のジンパに参加したんです。通常は4,000円くらいの会費が必要になるんですけど、「新卒は1,000円」という案内があったので行ってみました。運営に携わろうと思ったのは、その年末の忘年会がきっかけです。そこで「運営メンバーを募集しています」という話が出ていて、メンバー募集の際に手を上げました。──その後コロナ禍を経て、今年のギネス挑戦に至ったわけですね。そして現在では、山本さんが組織交流委員会の委員長を務めていると。実は最近になって委員長に任命していただいたんです。先代の代表も30代後半の若い方なのですが、今回北海道の遠くの方に移られるということでお話をもらいました。──他の組織交流委員会のメンバーも若い方が多いのですか。他のメンバーも30代が多いですね。私よりも年上の方が多いですが、20代後半のメンバーもいます。──それだけ若手が集まる同窓会組織は全国的にも珍しいですが、何か若手を集める秘訣などはありますか。心がけていることといえば、イベントの参加者で「委員会に興味があります」という人は、遠慮なく誘うことですね。活動に興味を持つ人たちは、会社外のつながりを作りたいといった目的を持っていますので。──今回1,000人近くの集客とギネス記録の達成という大成功を収められたわけですが、こうした同窓会企画に携わる人に向けてアドバイスをお願いします。集まりやすい同窓会を実現するためには、「同窓会=年配の方が集まるイベント」というイメージを払拭する必要があると考えています。自分以外が年上の方ばかりでは、どうしても萎縮してしまうじゃないですか。最低限、同世代の人たちがいるとわかるようにアピールした方がいいと思います。また、今回の参加者の内訳として家族連れは約450名で多くの卒業生がパートナーやお子様を連れて参加しています。ホテルの宴会場を借りて飲み会をするよりもBBQの方が休みの日に家族で参加しやすい企画になっていますね。あとは値段設定です。ホテルなどを借りると、どうしても1回の参加費が5,000円以上になってしまいます。社会人といえども「5,000円は高いな」と思う人が多いので、例えば「30代までは2,000円で参加できます」といった具合に、若手のハードルを下げることが大切だと思います。2024年新卒は78名も参加していただいたので、特に新卒の会費を下げて参加のハードルを下げるように心がけています。──最後に、今後の展望についてお話いただけますか。ギネスをやり遂げてしまい、現状では新たに挑戦したい企画などは思いついていないですね(笑)。僕個人の目標としては、やはりもう少し若い人に来てもらえるようにしたいです。同窓会に参加してくれる人が増えれば「運営メンバーをやりたい」という人も増えるでしょうし、そうなれば「人手が足りない」「次の企画どうしよう」といった悩みも解消されると思っています。