前回の記事は寄付金戦略についてでしたが、今回はその中でも大学主体で行っているふるさと納税型寄付金にフォーカスして解説していきます。制度や法規制にはどのようなものがあるのか、導入するとどのようなメリットがあるのか、具体的にはどのような取り組みが行われているのかなど、ピンポイントに深掘りしていきます。関連記事:地方自治体と連携したふるさと納税型寄付金とは? メリットや導入事例を紹介<目次>1. ふるさと納税型寄付金とはその名の通り、寄付金額に応じた減税措置に加えて、返礼品などのリターンがある寄付金制度のことです。その中でも地方自治体からの働きかけによって導入されたものや、大学独自で導入しているものなどさまざまなかたちがあります。そんなふるさと納税型寄付金の制度や長所について掘り下げていきます。2. 法的な観点ふるさと納税型寄付金についても、その他の寄付制度と同様、税制上の優遇措置が受けられるように総務省が定めています。しかし、自治体と連携して行うものと、大学が独自で導入したものでは制度上の違いがあるため注意が必要です。早稲田大学では中央区と連携し、「ふるさと納税」のシステムをそのまま導入しています。この場合、「ふるさと納税」に設けられているワンストップ特例制度が支援者に適用され、寄付金額から2,000円を引いた額が所得税、住民税から控除されます。そして自治体を通し、寄付金額の最大7割が大学の元に届くという仕組みです。 一方、独自の取り組みで「ふるさと納税型寄付金」を導入した場合、通常の寄付と同様に支援者は税額控除制度か所得控除制度を選ぶことができます。また、大学独自でふるさと納税型寄付金を導入する場合、返礼品について特段の規定はありません。(※文部科学省問い合わせより 2021年1月8日訂正)通常の寄付同様、寄付金の使途を明示すれば返礼品制度を導入することが可能です。3. ふるさと納税型寄付金を大学主体で導入することのメリット先ほど早稲田大学を例に挙げ、自治体の制度を利用したふるさと納税型寄付金について紹介しましたが、それは各自治体の制度によって導入の可否が左右されてしまうものです。では、大学が独自にふるさと納税型寄付金を導入した場合にはどんな利点があるのか、詳しく解説していきます。 3-1. 寄付金額を最大限活かせる自治体の制度を利用した場合、先述したように、自治体を通して寄付を行うため、支援者が寄付をしてくれた金額よりも、実際に大学が活用できる金額が少なくなってしまいます。しかし、大学が独自でふるさと納税型寄付金を導入した場合、自治体を通す必要がないので最大限寄付金を活用できます。この場合には寄付に対する返礼品などの構造上「ふるさと納税」と似たかたちにはなりますが、制度上は「ふるさと納税」とは違うものであり、ワンストップ特例制度の利用はできず、あくまで寄付であることなどを支援者に理解してもらう必要があるでしょう。 3- 2. 土地に縛られる必要がない1つの大学に複数キャンパスがあることは珍しいことではありません。しかし、「ふるさと納税」は自治体が行うものであり、キャンパスや施設が所属する自治体ごとに制度の利用について違いが生じてしまうのが現状です。具体的には「ふるさと納税」の制度を利用しても、各自治体に所属している施設や事業ごとに寄付金の用途が限定されてしまう場合や、自治体内で生産されているものに返礼品が限られる場合があります。同じ大学の卒業生であっても通ったことのないキャンパスに対する支援のモチベーションを向上させることは難しく、大学にとっても寄付の機会損失になりかねません。大学独自で導入した場合、土地に依存した制限はかからず、大学全体で制度の活用が可能になり、より細やかな寄付金の配分や、事業の活性化を図ることができます。 3-3. マーケティングの視点で考えやすくなるふるさと納税型寄付金の導入は、単に返礼品を用意するだけでなく、それに伴った寄付金への思考の変化が伴います。どのような返礼品であれば寄付をしたことのない方にも注目してもらえるか、そのうえで大学への理解を深め、納得して実際に寄付をしてもらうためにはどのような告知をするべきかなど、返礼品の選定やサイトの設計などを通してマーケティングのフレームワークで寄付金戦略を考えるきっかけとなります。また、大学と関連するものや、卒業生が所属する企業の商品など、大学を想起させる返礼品にすることで母校への帰属意識の向上が期待できます。そして継続して大学に関心を持ってもらうことで、次の寄付に繋げていく長期的な寄付金サイクルの構築を視野に入れることが可能です。4. 導入している大学の事例を紹介大学が独自にふるさと納税型寄付金を導入した場合の利点を解説しましたが、実際に導入している大学はどのような取り組みを行っているのでしょうか。事例を紹介しながら解説していきます。4-1. 桜美林大学 | ふるさと桜募金https://kifu.obirin.jp/howto/gift桜美林大学の寄付金サイトは、まるで通販サイトのような親しみやすさと使いやすさを感じさせるサイト設計が特徴です。シンプルで分かりやすく、情報量も適切に抑えられている点が親しみやすさに繋がっており、返礼品のカテゴリ分けや、寄付金額に応じた絞り込み機能の導入も使いやすさを向上させています。返礼品は10,000円以下~100,000円までの寄付金額に対応した返礼品が取り揃えられています。キャンパスや所縁の地にまつわる返礼品から卒業生が経営する企業の商品、学生と地域の方が協力しているプロジェクトの商品など、大学への関心を高める効果も期待できます。 下記の記事では「ふるさと桜募金」を立ち上げた担当者のインタビューを掲載しています。ぜひご覧ください!関連記事:寄付集めだけでなく、新しいコミュニティも作れる可能性を秘めた「ふるさと桜募金」 4-2. 青山学院大学 | 万代基金「プレゼントつき寄付」https://www.aoyamagakuin.jp/support/variety/mandaigoup3/index.html青山学院大学の寄付金サイトでは、返礼品を「青学ギフト」と表現するなど、支援者への感謝が一貫して表現されています。青学ギフトには2,000円~60,000円までの卒業生と関連するものや大学グッズが取り揃えられ、その種類は100種類以上にも及びます。食品や記念品だけでなく、エステなど体験型のギフトも採用されている点も特筆すべき点でしょう。また、サイト設計にも大きな特徴があり、返礼品を一覧から選ぶものに加え、デジタルカタログが用意されており、カタログギフトのような感覚で、より詳しい解説を見ながら寄付の検討ができます。加えて支払い方法にAmazon payを導入し、寄付に対するハードルを下げ、支援者に寄り添おうとする姿勢が感じられます。そして、青山学院大学はこのふるさと納税型寄付金を導入した2018年は前年比で約45%の寄付件数増加に成功しています。(2018年度 寄付実績報告より) 4-3. 近畿大学https://100th.kindai.ac.jp/guidance/recognition/近畿大学では、今まで紹介してきた事例とは少し違った返礼品の活用をしています。寄付をしてくれた支援者全員に対して贈られる返礼品から1,000万円の寄付に対応し、11種類と他大学に比べて種類は少ないものの、特筆すべきは大学の得意分野を存分に活かし、リターンの大きい返礼品を取り揃えていることです。具体的には、近畿大学の水産研究所での食事券や、近畿大学病院でガン検診を受けられる招待券などが挙げられ、これらは大学が持っている強みを広める効果も期待できます。近畿大学の返礼品制度は複数回に渡る寄付金の累計額にも対応したものであり、高額な返礼品コースでも視野に入れやすく、長期的な寄付を促すアイデアです。サイト設計は返礼品を前面に押し出したものではないですが、図などを使い寄付への理解を促し、大学の公式サイトらしさと寄付に対する誠実さを感じさせます。5. おわりに今回は大学が独自に行っているふるさと納税型寄付金について解説させていただきました。大学の強みや環境などを活かして寄付金を募るだけでなく、長期的に大学に対して関心を持ってもらえるよう、各大学によってさまざまなふるさと納税型寄付金の活用法がありました。今や10世帯に1世帯は節税対策で当たり前にふるさと納税を活用する時代。この機会がふるさと納税型寄付金について知り、検討するきっかけの1つとなれば幸いです。関連記事:大学寄付金戦略を実例から学ぶ! 大学側がとるべき行動とはAlumni Labs (アラムナイ ラボ) では、寄付集めを最大化する為の様々なサポートを提供しております。適切な名簿管理や卒業生の活性化、イベント企画など、ぜひ下記からお気軽にご相談ください。Alumni Labs 相談・問い合わせフォーム