みなさん、こんにちは。Alumni Labs (アラムナイ ラボ) 運営、笑屋株式会社 セールスチームの福島です。私は大学様向け事業のセールスとして、月間平均で約20名ほどの大学職員様とお会いしてきました。この1年間、大学業界をより深く知り、そしてさまざまな課題を抱えた職員様とお会いしていく中で、セールスとしてある大事な気づきを得ました。この記事では、さまざまな担当者にお会いする中で感じた、現在の大学における校友領域の立場と、その未来について予測も含めてお伝えします。校友領域担当者様にとって、少しでも後押しになれば幸いです。大学の花形ポジションって何?大学の担当者とお会いしていく中で、過去にこんな発言をされた方がいらっしゃいます。「同窓会運営はあくまで、学内的には傍流的な業務と捉えられている。学内者をどうやって積極的にさせれば良いのだろう。」この言葉を聞いて、ある疑問が生まれたのです。「大学職員の花形ポジションはどこなんだろう?」学長室?教務課?学生課? ………。自分が大学生だった頃、「校友課」は一度も耳にしなかった言葉でした。では、大学の中で花形ポジションと認識される部署、発言力のある部署に共通することはなんでしょうか。それは、大学の収入においてどこが大きな割合を占めているか、だと私には見えています。少子化の進む日本、大学経営の危機現在、皆さまもご存知の通り、日本は少子化が進んでいます。また、オンライン教育の普及などにより、留学生獲得競争も今後拍車が掛かっていくでしょう。このような状況が進むと、大学進学率が飛躍的に伸びない限り入学してくる学生数の総数は必ず減少していきます。日本の大学において、収入の割合の半分を占めているのは「学生納入金」。つまり、学費です。学生の総数が減った場合、大学は入試や学費に関する収入が減少することになるでしょう。また、私立学校の経営状況について(概要)のデータによると、入学定員に対する入学者数の割合 (以下「入学定員充足率」) において、100%以上となっている(定員割れしていない)大学の割合が67%、つまり1/3が定員割れを起こしているのです。加えて、80%以上となっている大学も91.3%という状況で、全体の8%強が定員数の80%を確保できていないことになります。 たしかに、入学定員充足率についてはここ数年改善されてきているとはいえ、定員数を減らしたことや、入学合格のハードルを下げたことも要因のため根本的な解決とはいえません。また、大学経営の観点から見ても、私立大学の経営については現状4割が経営赤字状態といわれています。現状、特に私立大学においては、高等学校の運営なども行っている法人が多いため、学校法人としての経営に問題がある状態ではないことが多いですが、これを見ても学費に頼った経営では長い目で見たときに大きなリスクがあることがわかります。先ほどの平成30年度文部科学省寄附フォーラム配布資料「寄附に係る基礎資料」におけるグラフを見ていただいて特筆して分かることは、日本とアメリカの私立大学の収入を比較した際の寄付金割合の大きな差です。バブル崩壊後の日本、似たようなことがあった?「大学が潰れるなんて、ありえない。」だれもがこう思っていると思います。ただ思い返してみると、私が生まれた頃に同じようなことがあったと感じます。1997年、バブル崩壊後に経営が立ちゆかなくなってしまった銀行が相次いで倒産し、銀行・大手企業の「絶対潰れない神話」が完全に崩壊したことがありました。なかには統合をして生き残る道を選んだ企業もあったと記憶しています。この話、大学でも同じことが起きると思うと、とても危機感を覚えます。実際に昨今、大学同士の統合は出てきています。この状況を大きく変えられるキーワードこそ、「寄付金」ではないでしょうか。大学の努力で収入を増やせる方法、寄付金大学の収入源の中で、大学の努力によって増やせる項目が1つあります。それが寄付金です。先ほどご紹介した、平成30年度文部科学省寄附フォーラム配布資料「寄附に係る基礎資料」では、日本とアメリカとの私立大学における収益構造の違いが明らかになっています。アメリカは日本に比べて、寄付金の割合がとても大きいと分かります。欧米では、アラムナイに向けたソーシャルプラットフォームも充実しており、卒業生との常日頃からの関係構築に取り組んでいます。日本と欧米を比べると、寄付に対する土壌が違う面もありますが、大学が努力をすれば寄付金を増やすことができると私は確信しています。関連記事:大学寄付金戦略を実例から学ぶ! 大学側がとるべき行動とはどの大学の方も理解されていることだと思いますが、卒業生から寄付金をただ集めようと思っても勝手に寄付は集まってきません。私は、寄付金をより集めるための施策として、大きく分けて3つのサイクルが重要だと思っています。きっかけづくり → 潜在層の発掘ファンを増やす → 潜在層を顕在層へ改善活動 → 顕在層からのフィードバックと、その改善策の実行それぞれについて簡単に解説します。1. きっかけづくりまず、きっかけづくりとしてはコンテンツの提供が良いでしょう。ホームカミングデーや会報誌、Webコンテンツなど、卒業生の目に留まるように、寄付のきっかけとしてコンテンツの提供をしていくことが必要です。そのうえで、提供したコンテンツをしっかりと振り返り、届け方、つまりマーケティングにも力を入れるべきだと思います。定説によれば、在学生のうちから愛校心を育て、マーケティングをしていくことが最も大事だといわれています。2. ファンを増やす次に、ファンを増やす動きです。ファンを増やすためには、コンテンツ提供によって少しでも大学に興味を持ってくれた方をコミュニティ化し、コミュニティマネージャー (チームや団体の旗振り役) を育て、コミュニティマネージャー向けにもサービス提供をすることが重要です。そして、大学に対してのエンゲージメントが高いコミュニティマネージャーには、ホームカミングデーで同窓会などのイベントを幹事として開いてもらうなどして、関連する多くの卒業生を呼び込んでもらって潜在層を増やしてもらうといいでしょう。3. 改善活動最後に改善活動です。コアなファンは、常に自分や他者の活動に対して疑問や問題意識を持っています。こういった方から、大学に対する現状の課題感や大学に対する思いを詳しくヒアリングしてフィードバックをもらい、改善できるところから実行していくとよいでしょう。その改善が、コミュニティに関することなのか、コンテンツに関することなのか、その大学ならではの改善点が見つかると思います。この3点をうまくPDCAサイクルに落とし込み、実行していくと自ずと「大学への愛校心」そして「寄付」へと繋げることができるでしょう。さいごに今後、入学生が徐々に減っていくことは避けられないと思います。そうなった時に、花形ポジションは果たして、学生課でしょうか。それとも入試課でしょうか。私は、卒業生をはじめとする「校友」との関係構築を強固なものにし、愛校心の醸成、そして寄付を集めるために奔走する、校友領域の部署だと確信しています。そして、学生からの収入では経営が成り立たなくなるであろうタイミングが訪れたときに、関係構築を始めるのでは既に手遅れでしょう。非常に時間が掛かることです。手遅れになるのを防ぐためには、現在、現役世代として活躍している「若手校友」の心をガッチリと掴み、近い将来に寄付をいただける環境を作り上げなければなりません。未来の大学を救えるのは、今この瞬間に校友領域に取り組んでいる職員の頑張りや熱意でしょう。私、そして笑屋では、その頑張っている職員様をしっかりとバックアップしていきます。